最適なマルチテナントを構成し 運用コスト約50%削減に成功
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
写真左から【株式会社 grasys】Cloud Infrastructure Division 高田澪、泉水朝匡、【株式会社バンダイナムコエンターテインメント】CX戦略室 デジタルテクノロジー部 デジタルテクノロジー課 西岡智氏、高橋則夫氏、後藤卓氏、
■まず、御社の事業概要を教えてください。
後藤氏(以下、後藤):IP(キャラクターなどの知的財産)を軸に、ネットワークコンテンツ、家庭用ゲーム、ライフエンターテインメントを通じて、長く深く遊べる良質なコンテンツと多彩なエンターテインメントを世界中のファンにお届けしています。これが私たちの目指す姿です。
■どういった部署ですか?
後藤:私たちデジタルテクノロジー部は、バンダイナムコエンターテインメントで提供している多くのサービスに対して、技術的な領域を担う部署です。技術的部分というとすごく広いのですが、主にはオンラインの要素に関わる部分の情報ですとか、インフラであったり、ソリューションといったものを提供しながら開発をリードしていく部署になっています。部署には技術的な素養を持っているメンバーが揃っていますが、プログラムを触ってますとかインフラをダイレクトで触ってますということではなくて、それらを使っていかにビジネスに役立てるかというところを考えるとか、それらを利用した戦略を立てたりとか。デジタルテクノロジーという名前からすると、本当に技術をずっといじってるような印象をもたれるかと思いますが、どちらかというとそれを使っていかに事業に貢献できるかということを考える部署になっています。
■grasysとは非常に長くお付き合いさせていただいてるのですが、一番長く接していただいている高橋さんgrasysの泉水、高田二人の仕事ぶりはいかがでしょうか?
高橋:何を依頼しても嫌な顔一つせずに迅速に対応していただいて素晴らしいと思います。
■今回取り上げさせていただく、「新ゲーム共通機能提供プラットフォーム」という名前ですが、構築していく理由やビジネス的な理由、また旧環境の課題は何でしたか?
後藤:経緯としては、当時まだ家庭用タイトルがあまりオンラインと繋がっていなくて、非常に限定したオンライン機能を徐々に組み込み始めた頃でしたが、そんな中でオンライン部分を作れる会社がまだまだ不足していたため、私たちがその部分を用意して提供することで、開発がより効率的になり、ネットワークに不慣れな会社さんもそれを利用して、本来持っている力を上手く発揮できるんじゃないかと。それが発端ですね。
■新しくまた作ることになって、技術的な課題を乗り越えなければいけないことはありましたか?
高橋:世の中が進歩し、ネットワークに求められてるものも、すごくハードルが高くなってるし、レベルも高いものを求められています。このシステムの最初の作り始めの頃は、本当にちょっとした機能でおまけみたいな感じでしたが、次第にサービスに必須な機能が増えていきました。ネットワークがゲームにとって必須なものになり、世の中もそれが当たり前になり、求められるレベルが上がりました。すごく求められるものが多くなって、それに対して答えていく必要性が高まっています。それに対して私達は、サービスの下支えの基盤の部分で、しっかりした土台を作っていきたいと考え、その課題をgrasysさんと一緒に解決してきたと思っています。
■どういう解決ができましたか?
高橋:ユーザーのアクセスが多くなった時や、あるいは突発的な事が起きた時に、すぐ動けるような体制で運用できるようになりました。サーバーをすぐに増強したり変更したりといった、インフラの基本のベースアップができています。そこをgrasysさんには担ってもらっています。
■西岡さんは初期から参加してなかったと思いますが技術的なことで感じることは?
西岡:今高橋からあったように先代のシステムをベースとして今回のサービスを作っています。今回のサービスに関しては、重要な機能だけに制限して、各タイトルに共通して提供できる、且つ安定して信用してもらえるシステムとして提供する必要性があったので、その辺りに関してインフラで、もっと安定して提供するためにどういう構成にした方がいいかなどの課題はありました。その上でどうしても我々としてインフラの専門的な知識があるわけではないので、最新の機能や最適な機能があるという提案をいただいて、先代から比べればより良い構成であったりとか、システム構築ができたかなと考えています。
■grasys担当者の2人は、先代のシステムが新しくなった時にどういった解決ができたと思いますか?先代のシステムの課題はありましたか?
泉水:先代のプラットフォームも今回の新しいものもどちらかというとマルチテナントなサービスになってるのですが、最適なマルチテナントの構成になってないという課題がありました。一部の障害や高負荷が他のものに影響してしまう可能性を持っていました。それをうまくマルチテナント化するような構成にしたことで、各テナントごとに論理的に分離して、お互いに影響がないような構成にできたのは、先代のシステムからのアップグレードと考えています。
高田:そうですね。まずは既存のプラットホーム環境が小さな機能から始まっていて、最初はその機能に合わせた設計で動かしていました。セキュリティ周りの制御は、ホワイトリストの対応など、徐々にそのサービスやコンテンツが増えていくにつれて、その当初の設計だと運用面というか、作業面で比例して工数が増えるようになってしまっていました。その課題から、新しいゲーム基盤のプラットフォームでは、できるだけ運用側も効率的に作業ができるような設計を考慮して作られているので、既存の問題を踏まえて改善できたのを実感しています。
泉水:具体的な改善の結果を数値で表すのは難しいですが、機能ごとに構成を作っており、あまり使わない機能はスケールが不要になったので、おそらくそこにかかるコストは減っているはずです。頻繁に使うものだけをスケールできる設計にしたことで、コストダウンのメリットは出ています。コストは単純に比較すると2分の1くらいにはなっていると考えられます。
■今後、grasysに対して要望はありますか?
後藤:今ってサービスに利用するインフラとプログラムの切り分けがしにくくなってきていて、インフラの選定とかソリューションの選定を間違えるとサービス運営が難しくなることもあります。昔は箱さえあればよかったのですが、今は開発初期に行うソリューションやマネージメントサービスの選定によってサービスそのものの形が大きく変わることもあるので、一緒にやっていただく MSPさんが重要と考えています。各々の業務範囲の切り分けはあるのですが、一つのプロジェクトの中で開発とMSPの役割の垣根がなくなっている部分があります。MSPとしてサーバーの保守という業務ももちろんやっていただいていますが、インフラをどう使っていくかというところも、一緒に考えながらやっていただけるとありがたいと思います。
西岡:弊社の動き方としてやりたいことの大枠を伝えて、それを実現していただくみたいな作業の振り方が多いと思うんですよね。技術的な側面、もちろん現場にいて最新の技術を追っていらっしゃるので、こちらから出した漠然とした要望を具体化していただくっていうところは、今までもしていただいてはいますけど、ちょっと世の中的にもネットワークというかオンラインの技術ってのはもうゲームに限らず、当たり前になってきていると思うので、逆にゲーム以外の分野からでもこういったところで似たようなソリューションを使ってますみたいなところでご提案いただいて、より良いサービスを提供するためにご提案いただくことを、引き続きやっていただけると助かります。
■grasys担当者から今後の意気込みをどうぞ
泉水:新しいサービスが出る時はサービス選定でより良い提案ができるようにしていきたいと思っていますが、運用に入っても新しいサービスが出たらそっちに乗り換えた方がコストメリットがあるとか、パフォーマンスが出るとか、そういうのがあればどんどん提案できたらなとは思います。
高田:そうですね。運用していくなかで出てくる問題とか、あとはサービスローンチ前の負荷試験の検証をやった後、いざサービスが動き出したっていうところで、負荷試験では想定しきれなかった問題とか当然あると思うんですけど、今まで以上にその問題に対してスピーディに解決したり、その対策が取れるような動きを新しい技術を取り入れながら一緒に解決していけたらなと思っております。
■最後にgrasysへ一言お願いします。
後藤:やっぱりサービスに積極的に親身に入っていただけるところが良いと思っています。そこで解決策が出ないこともあるんですけど、専門的な知識を元に根拠のあるアドバイスをしてくれる、提案をしてくれるのはすごく助かってるところですし、さっきの話にもかぶるんですけど、単純に「サーバー運営をします」という会社さんではなく、そこを超えたさらに一歩先の動きをしてくれているところがすごくありがたいと思っています。grasysさんと仕事をする時の安心感って、そこにサーバー構築して終わりじゃなくて、それはなぜそういうことになっているか理解した上で運用してくれて、問題があっても対処してくれるところにあると思います。そういう柔軟性と積極性みたいなところが素晴らしいと思っています。
高橋:僕らと一緒に親身になって動いてくれて、開発にも積極的に中に入っていただいていて、かつ僕らが不得手な専門分野のことをフォローしていただける。また、提案型の話をしていただけているので本当にありがたいなと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。
西岡:そうですね。どうしてもインフラということもあって、突発的にお願いすることとかあったり、難しい内容だったりとかってこともあると思うんです。こちら側から提案した内容が少しおかしな内容であったりする場合も、ちゃんと論理的に考えていただいて、より良い手段を提案いただいた上で、こちらが求めている要求以上のものを、すごく迅速にやっていただけているので、頼りにしています。タイトルも多いので、やることもすごく多いと思うんですけど、その中でよくやっていただけており、ものすごく助かっております。
泉水、高田:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。